学生が4年間で世界7つの都市に滞在しながら学ぶ「ミネルバ大学」がすごい!

人と情報が国境を越えて行きかうグローバル社会において、まさに真のグローバルな大学といった表現がふさわしい大学がミネルバ大学」ではないか、そうした感想をもった。

その感想を抱いた記事とは、元ミネルバ大学日本連絡事務所代表の山本秀樹氏の未来を先取る新たな大学の形 ミネルバ大学」(リクルート カレッジマネジメンVol.211 Jul.-Aug.2018に寄稿)という記事である。

最近よく見聞きするミネルバ大学については、その教育方法などを改めて調べてみたいと思っていたところ、この記事は非常にわかりやすくミネルバ大学について紹介しており参考になった。

特に私が、ミネルバ大学が他の大学と比較して目新しく、優れているなと感じたのは、

 

  1. 全授業が19人以下のオンライン・セミナー形式で実施される
  2. 学生が4年間で世界7つの都市に実際に居住しながら現地で様々なプロジェクト学習・インターンを実施する。

 

の2点である。特に2点目はこれまで聞いたことがない制度だ。

記事中、7つの都市については、以下の図表3に記載の都市であることが説明されている。北米、南米、ヨーロッパ、アジア等、実に多様な都市である。
4年間で7つの都市なので、各都市およそ半年くらいの滞在期間だろうか。

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1都市に半年としても、各地に滞在しプロジェクト学習やインターンに取り組むことで、各地の文化を十分理解することになるだろう。住んだことがあるというのは、異文化理解には非常にメリットがあると思える。

そしてその経験を学生間で共有する(学生は各地で寮生活)ことで、異文化体験をより濃い重層的なものにできる。

そして、この2点の取組を中心として、ミネルバ大学は既存の大学が有する課題を解決しようとしているといえる。 ミネルバ大学が解決を目指している大学の課題とは、次の4つである。

ミネルバ大学が解決を目指している大学の課題

1.学生の社会に出るための準備
2.効果的な教授法の活用
3.有意義なグローバル経験
4.学習機会の平等と投資対効果

 
記事を読む限り、それぞれの課題に対するミネルバ大学の取組は、以下であることが読み取れる。やはり、キャンパスを持たず、学生が4年間で7つの都市に滞在することで、有意義なグローバル経験を実現し、投資対効果を高めることにつながっているという点が素晴らしい発想だと思う。
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1.学生の社会に出るための準備
 →将来の職場となり得る学外の協力機関とのプロジェクト学習の機会を豊富に提供

2.効果的な教授法の活用
 →授業は全員が同時参加するオンライン・セミナー形式
 →授業中のディスカッションを活性化させる様々なツール
 →オンラインゆえの学生の習熟度判定と習熟度データ蓄積の活用

3.有意義なグローバル経験
 →学生が4年間で世界7つの都市に実際に居住
 →現地で様々なプロジェクト学習・インターンを実施できる仕組み
 →全寮制にする理由は、様々な国から集まった学生達が各都市で感じたことを共有

4.学習機会の平等と投資対効果
 →キャンパスを持たず、滞在都市の施設を最大限利用
 →「都市をキャンパスにする」という逆転の発想で、施設運営費を大幅に圧縮
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最後に、参考までに記事中でも紹介されている、ミネルバ大学の授業と既存大学の授業比較について、整理された図表を紹介しておく。

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日本であれば、制度的には、通信制大学の枠組みの中で、同じような取組ができるかもしれないが、オンラインによる学習プラットフォームがどこまで作りこめるか、日本を含め、各都市に滞在するなどの仕組み構築ができるかが課題になりそう。

今後、日本でもこれまでの大学とは一線を画す、新たな大学が出てくることを期待したい。