省庁横断の報告書検索サービス「CLIP」を使ってみた。

ツイッター経由で、「CLIP」という省庁横断の報告書検索サービスサービスがあることを知りました。

note.mu

「そういえば、リサイクルのことを調べているんだけど、環境省とか経産省とか、いろんなところに報告書があって、なかなか面倒なんだよね。」

という、コンサルとして働くメンバーの一言がきっかけで、開発がスタートしたというこのサービス。まさに自分もいろいろな政策に関することを調べる場合、同様のわずらわしさを感じていたので、非常に興味を持ちました。

というわけで、しっかりブックマークしたうえで、試しに使ってみました。

まず、関心分野でもEdTechで検索。経産省の報告書2件がヒット。
動作が非常に軽くすぐに検索結果が表示されました。

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ちなみに検索機能においては、絞り機能もあります。
絞り込みとしては、「期間」と「省庁」の2つのフィルタで絞り込みができます。

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次に教育政策。全省庁検索したところ、検索結果は9件。
経済産業省、外務省、総務省厚生労働省と複数の省庁の報告書がヒットしました。
こういう検索ができるのがこのサービスのメリットですね。

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現時点では、この省庁横断の報告書検索サービス「CLIP」では、1府11省2庁(※)の報告書881件をキーワード検索することができるとのことです。

(※1府11省2庁=内閣府総務省法務省、外務省、財務省文部科学省厚生労働省農林水産省経済産業省国土交通省環境省防衛省、復興庁、金融庁(今後、対象省庁は拡大する予定とのこと。))

一方で、まだまだβ版なので、プレスリリースされていない報告書、審議会の答申、白書などは現段階では検索対象に含まれていないとのことです。

プレスリリースされていない報告書や審議会の答申なども検索対象になるともっと活用できそう。プレスリリースされていない報告書がどれほどあるのかは存じませんが、結構あるのではないかと思います。また、個人的には「中間報告」「中間とりまとめ」の類の報告についても検索対象になってほしいなと思います。

会議体によっては、最終報告まで時間がかかるものも多いですし、その間の議論の経過として、中間報告を参考にすることもあります。

今後、このサービスを折に触れ使っていこうと思います。



EdTechの市場規模と関連サービス(備忘メモ)

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  出典:ITソリューションフロンティア EdTech市場の現状と課題 (野村総合研究所)

拡大するEdTech市場。クローズアップ現代ワールドビジネスサテライトなどでも動向や関連サービスが報道されていたので、市場規模に関するデータと関連するサービスを少しまとめておきます。


■Edtech関連サービス(1)
atama plus株式会社|AIで最短の個別学習 


以前、ワールドビジネスサテライトで紹介されていました。
タブレットでの個別学習をAIが最適化するサービスを展開。

先生のタブレットには、学習者の学習状況がモニタされます。

www.atama.plus

www.tv-tokyo.co.jp

forbesjapan.com

 

■Edtech関連サービス(2)
AI(人工知能)型タブレット教材「Qubena」


AIによるアダプティブラーニングで圧倒的な学習効率を実現AI(人工知能)を搭載したAI(人工知能)型タブレット教材「Qubena」。

qubena.com


特許取得の「パーソナライズ学習システム」が効率的な学習を支援
ユーザーが回答した情報を蓄積し、一人ひとりに最適な問題を出題する教材とのこと。

株式会社COMPASSが展開。
同社は経済産業省の「未来の教室」実証事業に同サービスを使った事業が採択されています。実証事業の報告も期待したいです。

 

■Edtech関連サービス(3)

教育現場を支援するICTプラットフォーム「Classi」

テスト結果に応じた動画・問題で個別学習を支援する機能や、
先生・生徒・保護者間の円滑なコミュニケーションをサポートする機能など、
教育現場の学習を支援します。
最近、市町村などの教育委員会との連携もされていて、どんどん公教育の分野で成果をあげてほしいなあと思います。

classi.jp

 

以上です。どれも面白いサービスで私学や塾だけでなく公教育にもどんどん導入されていってほしいと思います。

大阪府箕面市の教育データを活用した取り組みが素晴らしい!

大阪府箕面市の「子どもステップアップ調査」の取組について、スマートスクール構想検討WG配布資料で紹介されています。データを活用した学校経営として、非常に参考になる事例なので、ブログに備忘録として少し要点をまとめておきます。


 1.データに基づいた教職員の指導力向上の取組

 まず1点目が、「子どもステップアップ調査」のデータをもとに、教員の指導結果を客観的に把握し、教員の指導力向上に取り組んでいることです。
 大阪府箕面市では、小学校1年生~中学校3年生まで全9学年で、毎年、子どもたち一人ひとりの状況を、全方面(学力、体力、生活)について調査しており、その結果を活用して、教員の指導結果を把握することで、教員の指導力や適性把握に取り組んでおられます。
 具体的には、調査データを基に児童の学力の経年変化を追うことで、ある先生が担任したクラスが、その担任の先生の下で、学力にどういった変化が生じているかを把握しています。スマートスクール構想検討WG配布資料の6ページ目がわかりやすいです。

 この例では、E教諭について、分析した例を紹介しています。
 

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 これは、「子どもステップアップ調査」経年データから、H25年度時点で5年1組であった児童それぞれの前年データを集計し、そのデータと5年1組時点の調査データと比較することで、E教諭の指導の結果どのような変化が生じているかを把握しています。
 事例では、偏差値によって計っているようです。

 E教諭の担任によって、H25年度時点の5年1組では、社会の偏差値が前年より伸びていることがわかる結果(51.9→54.7)になっています。H26年度時点の担任クラスの変化においても、同様に社会の偏差値が上昇していることから、E教諭は社会の指導力が高いことが伺えるという判断できます。
 一方で、E教諭の担任クラスでは、算数の偏差値が下がっている傾向がうかがえるので、算数の指導力に課題があることがわかります。
 
 こうしたデータを活用し、教員の個票までを作成することで、指導育成に活用している例も紹介されています。(資料p.9)

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 このように客観的に教員の指導結果を把握することに取り組んでいることから、正にエビデンスに基づいた教員の指導力向上に取り組むことができますし、教員評価においても納得感のある評価につながると感じます。

 2.学級経営力を客観的に計る取組


 次に素晴らしいのは、学級経営力を客観的に計る取組です。
 この点については、学級の絆や学級の規範意識といった、数値では図ることが難しい部分について、質問事項を作成し調査することによって、学級の絆や規範意識定量的に計ることができるよう指標開発している点が素晴らしいポイントです。

 質問としては、クラスには、リーダーにふさわしい人がいるか、クラスにはいいところがあるか。球技大会やクラスの発表会があるとき、団結するか?といったクラスの絆を測るための質問を調査することで、その回答データを活用し、その集計データをもとに、学級経営力を計っています。

 また、悪化している項目などを把握することで、学級崩壊の兆候を早期に把握するなどの取組に活用しており、非常に有益なデータ活用の取組と感じます。 

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 すべての学校がこうした経年データを調査取得し、教員指導や学級経営に活用していってほしいと感じる取組ですし、多くの学校は参考にしてほしいと思う取り組みです。
 実際にこのような取組をやろうとすると、データの集計や結果出力作業等に時間がかかりそうなので、その点はどのようにやっているのか?より詳細に知りたいところです。

 その点個人的には、タブレット等を使ってアンケート回答・集計、結果表示のようなシステムが構築できれば、他の学校への水平展開も容易だと思うので、そういった取り組みも期待したいところです。

 本件については、以下の記事も非常に参考になりますので、合わせてご覧いただくと、大阪府箕面市のこの取り組みの素晴らしいさがよく理解できるかと思います。
 ご参考まで。

www.holg.jp

以上、箕面市の「子どもステップアップ調査」の実践事例の紹介でした。

学力向上への貢献度を教員評価に含めてはいけないの?(大阪市の学力テストを教員評価へ反映する議論について)

 

 

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https://twitter.com/izure_tobuka/status/1030459242128392192?ref_src=twsrc%5Etfw


大阪市の学力テストの件が話題になってから、一月半以上たってしまいましたが、上記のツイートはこの問題について、わかりやすく写真も添付して表現されていたので、備忘録として引用しつつ感じたことをメモ。

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N中等部の挑戦・既存の中学校に通わなくてはいけないのか?

nnn.ed.jp

japan.cnet.com


N高等学校を運営する、学校法人角川ドワンゴ学園が、「N中等部」を2019年4月に開校するという発表がありました。

N高を作っているのでこれは自然流れかと思いますし、いずれこういう学校が出てくるのではないかと思っていました。

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期待の専門職大学「i専門職大学」と「ミネルバ大学」の共通点と違い

平成31年度より、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関として、専門職大学(※1)が創設されます。

この専門職大学の中で、個人的に注目している大学が、ICTでイノベーションを起こす人材を育成を掲げ2020年4月新設を目指す、i専門職大学(以下、i大)です。

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i大は、先日学長就任予定の中村伊知哉氏が、SAPとi大の連携についてツイートしており、SAPは最近サッカーなどで画像認識絡めてビッグデータ分析もしていて(※2)、個人的に教育領域でもSAPは新しいデータ分析などの取り組みができるんじゃないかと思っていた事もあり、i大がどんな領域でSAPと連携するかなど、i大の取組に期待感を高めているところです。

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学習者の学力を高める要因は何か?(【紹介】ジョン・ハッティ 教育の効果: メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化)

John Hattie 教育の効果: メタ分析による学力に影響を与える要因の効果の可視化

 

 

今、この本を読んでいます。
本書は、学習者の学力を高める要因を調べることを目的に行われた分析結果として、
学習に影響を及ぼすさまざまな要因について説明しています。

少し難解な本なのですが、

・フィードバックは学力に対する効果の大きい要因の上位10位以内である
・間違うことが受け入れられることが重要なのであり、そういった雰囲気があってはじめて学習の効果が高まる。

など

学習者の学習に好影響を及ぼす要因を明らかにしていて面白いです。

個人的には、この本が明らかにしていることは、いわゆるコンピテンシーというか、「学力向上に好影響を及ぼす要素をどれだけ満たしているのか?」という、学力向上に向けた現状分析の指標として活用できるのではないかと感じます。

 

しかしながら、原著者としては、

効果量は絶対ではない

「なぜその手法が現状効果がある/ないのか、その理由を考察することが、この本の主眼

ということに注意を強く促しており、この本で説明した学習影響を及ぼす要因の効果量をみて、この学習方法が良いと言う事を目的としているわけではないとのことです。

 

私が思うような活用方法においては、「効果量が高い」という結果ではなく、その理由を考察したうえで、現場の現状を考慮した上で、その要因を現場で取り入れたほうが良いかどうかを丁寧に合意することが必要なのだろうと思います。


少しずつ読み進めていこうと思います。

もしも、すでに読まれている方がいらっしゃいましたら、感想などをコメント欄等でお聞かせいただけると幸いです。