期待の専門職大学「i専門職大学」と「ミネルバ大学」の共通点と違い

平成31年度より、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関として、専門職大学(※1)が創設されます。

この専門職大学の中で、個人的に注目している大学が、ICTでイノベーションを起こす人材を育成を掲げ2020年4月新設を目指す、i専門職大学(以下、i大)です。

              f:id:written_by_K:20180902170005p:plain


i大は、先日学長就任予定の中村伊知哉氏が、SAPとi大の連携についてツイートしており、SAPは最近サッカーなどで画像認識絡めてビッグデータ分析もしていて(※2)、個人的に教育領域でもSAPは新しいデータ分析などの取り組みができるんじゃないかと思っていた事もあり、i大がどんな領域でSAPと連携するかなど、i大の取組に期待感を高めているところです。

 


さて、このi大ですが、最近世界で注目されているミネルバ大学(※3)をi大の一つの指針とみているとして、中村伊知哉氏が、ミネルバ大学とi大の共通点、そして違う点について連続ツイートされていました。

i大の目指す姿を理解するうえで参考になりますので、アーカイブするためにも、そのツイートをブログにまとめておきます。

〇 ミネルバ大学とi大の共通点(※強調は筆者)

 1. ミネルバは全授業オンライン化。講義を禁止し、反転授業+完全アクティブラーニング。少人数授業。
i大もこれをやりたい。講義禁止、っていう腹のくくり方がいい。知識はスマホで取ればいい。リアルな授業はディベートと創作。これまでの大学とはガラリと違います。

2.企業・社会が求めるスキルを身につける
i大もそうします。大学が教えたいことと企業が求めていることのズレをマーケット・インでなくします。クリティカル思考・クリエイティブ思考・効果的コミュニケーション・効果的インタラクションというミネルバの4汎用スキルは参考になります。

3.テニュア(終身雇用制)なし。
i大もそうします。テニュアは大学教員に競争力と進化インセンティブがない元凶。
むしろいかに自らを競争環境に置くかの設計を重視します。

4.企業との協働、インターン重視。
i大はこれをより押出し、インターン必修の「企業立」大学とします。構想そのものを数十の企業とともに設計しており、企業との協働を教育の軸に据えます。
ミネルバ創業者のベン・ネルソン氏は当初、構想が資本家などから拒絶されたそうです。その後、ピーター・ティール氏やラリー・サマーズ氏らの大物に認められて動き出したとのことです。
i大は、構想当初から数多くの企業に支持されておりまして、企業からのニーズに合致していると感じています。

5.安い学費。
i大もミネルバ大と同水準(年150万円程度)の学費とする予定です。日本の大学としてはそこそこですが、アメリカのアイビーリーグからみれば数分の1。しかもi大はそれ以上に自ら学費を稼ぐ仕組みを講じ、実質負担ゼロ、いや学費を上回る収入が得られるよう努めます。

 
〇 ミネルバ大学とi大の違い(※強調は筆者)

1.ミネルバは「トップエリート大学」を標榜しています。教員もトップ級のアカデミズム出身者。
i大はそれを目指すのではなく、より産業界で活躍するプロ、イノベータを創出したい。このため教員の大半は産業界出身のプロフェッショナル。

2.「ミネルバ研究所」を併置し、研究にも力を入れる。教育+研究。
i大は研究機関ではありません。他方、学生の起業をフォローする「i株式会社」を併設、全教員と全学生がビジネスを展開します。教育+ビジネス実践です。企業との協働にリアリティーを持たせます。

3.ミネルバはキャンパスを持ちません。
いいね。i大は日本の設置基準に基づき、キャンパスを持ちます。なのでこれを最大限に活かします。本校舎は墨田区に、さらに起業連携の場として港区竹芝に拠点を置く。そこを教育特区にし、さまざまな実験・実証の場にします。濃い産学連携空間を構築します。

ミネルバが世界7都市を巡って学ぶというのは魅力的です。アジアはソウルと台北。そして完全寮制。これらはi大もチャレンジしたい目標。海外の大学と提携し、学生が行き来できるグローバル・キャンパス・パスポートを用意したいと考えています。

他方、i大は「全員起業」を必修にします。社会起業を含め、失敗を恐れずチャレンジする環境を整えます。これはミネルバにもない仕組みで、なるほど!と思わせる成果を上げたいです。

 
こう見てみると、i大は、「ビジネス、産業連携、起業」といったキーワードに象徴されるように、まさにビジネスを実践する場を目指されていることがよくわかります。

その意味でも、専門職大学制度の趣旨にかなっている大学と思いますし、この大学制度の今後の動きにも影響が大きいのではないかと思える点も、個人的に動向を注目している理由でもあります。

実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関として、i大の今後に引き続き期待したいと思います。


※1 専門職大学は、55年ぶりに創設される新しい大学制度。
    専門職大学の概要や特色については、以下を参考。
    専門職大学・専門職短期大学・専門職学科:文部科学省

※2   SAPのサッカーでのデータ分析について以下の記事などを参考。  
   ロシアW杯で新たに導入された「試合を丸裸にする『カメラ』」の役割 - 週刊アスキー
※3  ミネルバ大学については、以下の筆者の過去記事などを参考。
  ・学生が4年間で世界7つの都市に滞在しながら学ぶ「ミネルバ大学」がすごい!
  ・全授業がオンライン!4年間で7都市に滞在!ミネルバ大学を知るための4つのお薦め動画